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本作は,2002年に発売されたゲームキューブ版(当時のタイトルは「biohazard」)をHD化したタイトルだが,単なる移植ではなく,新しい操作方法や日本語音声が追加され,より遊びやすくなっている。
“元祖サバイバルホラー”として知られるタイトルが,現行のハードでどのように変わったのだろうか。本稿では,PS3版のプレイインプレッションをお届けしよう。
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「バイオハザード HDリマスター」公式サイト
古さを感じさせない当時の完成度と
HD化によるグラフィックスの強化
本題に入る前に,「バイオハザード HDリマスター」の原作であるゲームキューブ版(以下,GC版)について触れておこう。
ご存じのとおり,サバイバルホラーというジャンルを切り拓いた第1作「バイオハザード」は,1996年3月にPlayStation版(以下,PS版)として発売されている。その6年後に当時の最新技術によるグラフィックスや演出面の強化をはじめ,舞台となる洋館の構造や謎解きなどに大幅な変更が加えられて発売されたのがGC版である。PS版のディレクターを務めた三上真司氏(現・Tango Gameworks)が,再びディレクションに携わったことでも大きな話題となり,全世界で135万本のセールスを記録した。
筆者は発売当時にGC版をプレイしているが,グラフィックス一つとってもPS版との違いは歴然で,非常に完成度が高かったことを覚えている。その後のシリーズ展開にも大いに期待したものだ。
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ゲーム史に残る,ゾンビとの邂逅シーン。バイオハザードをプレイしたことがなくても,このシーンは知っているという人は多いはず |
そんなGC版をHD化した「バイオハザード HDリマスター」だが,ゲームをスタートした直後の感想は「あれ? 思ったより古くないぞ」というものだった。HD化されたとはいえ,元は2002年の作品である。さすがに古さを感じるだろうと思っていたのだ。
しかし,GC版は当時としてもグラフィックスのクオリティは高く,さらにHD化に合わせて背景やキャラクターのテクスチャに手が入っているとのことで,大きめのモニターでプレイをしても見劣りすることはなかった。
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古くからのファンには印象深い,洋館の入り口。すべての物語が始まった場所でもある |
ちなみに「ラクーンシティ感染拡大キャンペーン」の達成によって,BSAA版コスチュームも最初から選べるようになっている(関連記事)。洋館の雰囲気に対して,少々洗練されすぎている印象はあるが,嬉しい追加要素といえるだろう。
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より美しくなった印象のジル。その表情に凛々しさが増しただけでなく,なんとGC版よりも“揺れる” |
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BSAAのコスチュームを選択したクリスとジル |
昨今の3Dアクションゲームに準じたアレンジ操作
ゲーム本編に目を向けると,「バイオハザード HDリマスター」では新たに「アレンジ操作」が追加されている。「バイオハザード」といえば,方向パッドの上でキャラクターが前進,左右で旋回するという,いわゆる“ラジコン操作”で知られ,この操作方法はGC版でも踏襲されていた。
「バイオハザード」はそれぞれのシーンが固定のカメラ視点で進行するため,最適な操作方法だったわけだが,プレイヤーがカメラを操作できる昨今の3Dアクションゲームに慣れてしまうと,少々厳しいものがある。
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そんな筆者のようなプレイヤーのために用意されたと思われるアレンジ操作は,左スティックを倒すと画面上のキャラクターがその方向へ移動するという直感的な操作方法だ。移動中にシーン(カメラ視点)が変わったとしても,左スティックを別の方向に倒さなければ,意図しない方向へ進んでしまうことはない。
もちろん従来どおりの「オリジナル操作」も選べるので,当時の記憶を思い出しながら楽しむことも可能だ。
元祖サバイバルホラーの緊張感が甦る……
アレンジ操作が追加されたとはいえ,作品自体は12年前のものであり,昨今のユーザーフレンドリーなゲームと同じ感覚で挑むと痛い目に遭うだろう。最もスタンダードな敵のゾンビにしても,カメラ視点が固定されていることでプレイヤーからは見えにくい場所に配置されており,驚かされることになった。ショットガンを手に入れていない段階で遭遇するケルベロス(ゾンビ犬)も,かなり手ごわい相手といえる。
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そして何よりもきつかったのは,アイテムの所持数が限られているということ。筆者はPS版もGC版もプレイしているが,洋館を探索する手順をあまり覚えていなかったため,何度もアイテムボックスがある部屋を出入りするハメになってしまった。
アイテムスロットはジルが最大8つ,クリスに至っては6つしかないので,たとえ目の前にその場で使いたい消耗アイテム(グリーンハーブや救急スプレーなど)があったとしても,アイテムスロットが埋まっていればどうにもならない。「その手に持ってるハンドガンを足下に置けばいいだろ!」と言いたいところだが,システムとしてはそういうわけにもいかず,「ああ,12年前もこんなこと言ってたなぁ」というノスタルジックな気分に浸った次第である。
![]() ジルはアイテムを8つまで所持可能。さらに一部の扉の鍵を開けられるキーピックを入手できるので,クリスよりも攻略しやすい | ![]() アイテムをメニュー画面で調べたり,組み合わせたりすることで,新しい発見があることも |
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敵を攻撃するために武器や弾薬を取るか,敵にやられたときのために回復アイテムを取るか,あるいは効率的に探索するためにキーアイテムを持っていくのか。数少ないアイテムスロットに頭を悩ませるのは,バイオハザードシリーズの初期作品の特徴であり,その葛藤自体も元祖サバイバルホラーを楽しむ要素として捉えるのが正解だと思う。
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当時は遊べなかったプレイヤーにぜひ遊んでもらいたい
GC版やWii版(2008年発売)の発売当時,さまざまな事情でプレイできなかった人が,シリーズの原点を知るにはうってつけといえる「バイオハザード HDリマスター」。「クリムゾン・ヘッド」「リサ・トレヴァー」といった敵が追加されているため,PS版をプレイした人には,きっと新鮮な驚きがあるだろう。
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PS版には登場しなかった敵の存在は,新鮮かつ脅威となるはずだ |
さらに登場キャラクターの日本語音声が新たに収録され,没入感が増していることも付け加えておく。もちろん近年のシリーズ作品と同様に,映画の吹き替えなどの経験が豊富な実力派声優陣が起用されており,字幕のテキストそのまま吹き替えているのではなく,新たに書き起こされた台本を元にしているのも嬉しいところだ。
また,特典の「ウェスカーズリポート I&II」には,ウェスカーの視点で物語の背景が語られる映像や読み物が収録されている。資料的価値が高いことに加え,15分以上の映像を再編集しているとのこと。本編のネタバレが満載なので,クリア後にじっくり楽しむことをお勧めする。
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難度を決定する質問に3つめの選択肢が追加され,比較的簡単な難度が選べるようになった。「III」を選択すれば,序盤のゾンビはハンドガン数発で倒せる |
![]() 力尽きるとセーブポイントからやり直し。オートセーブではないので要注意 | ![]() データセーブには「インクリボン」が必要。つまりセーブできる回数に制限があるため,使いどころを考えなくてはならない |
バイオハザードシリーズの中でも“リメイク”という形で新作がリリースされているのは第1作のみである。キャラクターの選択によって攻略方法やエンディングが変わるシステム,その後の作品へとつながる意外な結末,そしてゾンビが振り返る衝撃的な名シーン。その完成度が高かったからこそ,今回のような“HDリマスター”も実現したのだろう。
ちなみに同シリーズは,2年後の2016年に20周年を迎える。少々気が早いとは思うが,「バイオハザード HDリマスター」や最新作「バイオハザード リベレーションズ2」(2015年初頭発売予定)を楽しみつつ,アニバーサリーイヤーにも期待したいところだ。
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